不明階 というかメモ

その階層には、処刑台があった。
町々に処刑台が並んでいるのが見えた。ヨネサキはそれが処刑台だと知ったときなんと怖ろしい街だろうと思った。
そのような町に生きる人々は、恐怖支配に怯えているのだろうと考えていた。しかし町を行く人々に恐れの様子はない。頭上から絞首台に見下ろされているというのに。
ある日処刑が行なわれている場面に遭遇した。人々にとっては、それは儀式だったのだ。あまりに狂った情景だとヨネサキは回りの人間の表情を見た。しかしその目は狂気に狂ってもいず、好奇に喜んでいるわけでもない。
少年が引きずり出されてくる。人を刺した少年だ。
裁判官は問う、この者に死はふさわしいかと、町人は返す、彼が罪を犯したのは我々にも罪があったと。
少年は自ら抱く殺意に苦しんでいた。うち明けられなかった町人にも責任があると。
裁判官は問う。この者に死はふさわしいかと。町人は答える、彼の罪は町が贖うと。
少年は吊られることを逃れた。
つぎに子供を高い崖から落したという少年が引きずり出されてくる。
裁判官が言う、この者は自分の楽しみのために命を殺めたと、裁判官は問う、この者に死はふさわしいかと。町人は返す、彼に死はふさわしいと。
神父は問う。神に言うことはないかと。少年は答える「自分が悪かったと、どうか情けを」と許しを請う。
「神の前で許しを請うがいい」
好んで人を殺めた少年は高い台にくくられた。
ヨネサキはそれを見て、二人の少年の違いを考えた。
答えは出なかったが、この町の処刑台の意味を少し理解した。