カレイドスター

スタッフ神!ゴロゴロゴロ(転げ回る音)とは言いつつ、快活な作品になっていないことも事実で難しいところ、とはいえそのモヤモヤすることが、第三者の悪人の存在ではなく、自分自身や、決して悪意ではない回りの情況から来ている物なので、理不尽な不快感にまではいっていない。今は耐える時なのだと思わされる。
ユーリとの天使の技の練習、段々と上手くなっていくそらの姿がちゃんと描写される、実際に上手くなっていけば、美しく見えてくるところも、天使の技のアイデアのよさが光る。
デーモンスパイラルは、見ていて気持良いと言うよりも、ハラハラさせるような不安な技だし、観客もビックリしてしまうだろう。これでそらの勝利は決定したようなものだ。
メイの方は、フェスティバルにあたり、物足りなさを感じている。翌日そらの出場に気づき(遅いよ(笑))ライバルの出現に意欲が上がる。
と同時に、メイはそらを意識しすぎ、そらを倒すための技に魅力が出るだろうか、それに対してそらの方はなににも目をくれずに、技と向かい合っている、この真剣さがそらの勝因だろう、間違いない。
と、フェスティバル当日、駆けつけるみんな「優勝してねそら、そして三年後はあたしと舞台に出るの」と無邪気でカワイイ事を言うロゼッタ
しかし華やかな舞台の裏は、ドロドロしていた。魅力的な夫妻も、舞台裏に帰ってくると、お前達のせいで優勝はお手上げだと醜いセリフを吐き、練習を手伝ってくれたと思っていた二人は技を盗みに来ていたのだった。
ユーリはそのことに気が付いていたようだ、そう考えなかったそらは激しいショックを受ける。(と、さすがにこのシーンは、描写不足かなと感じないこともなかった。二回の登場でそんなに信頼も出来ないし、ユーリが技を盗みに来たのだろうと言うことを気づいていたと言うのも、それに対して対策をしないのかとか、そらにそれとなく覚悟してもらうとか、ギリギリに現実をしったらそらもまいるだろう、とか考えなかったか?とかそれ自身がこのフェスティバルの暗部だと言うことも)
正直なところ、サーカスの裏側は、ドロドロだよと言う想定にして、それとは相容れられないというそらの立ち位置が、扱いにくい、だけど、それに挑戦しているスタッフに すごい 覚悟を感じた。
技を盗もうとした二人は自爆、しょせん見ただけで真似ようとする段階で無謀だった。そのことを「そんなことをするつもりはなかったけれど、君たちが現れたから自分たちが勝つためには、技を盗むしか道はなかった」というようなことを言う。それは汚いなと思う。確かに、勝つために、相手の技術を盗むとかも、否定できない、甘いこと言ってられないし。
そしてそらの演技。こんなのはわたしの夢見たのカレイドスターの世界じゃないと、泣きながら中途半端な天使の飛翔を見せ、途中棄権してしまう。
すごい展開、こう来るとは思わなかった。
確かに、ここであの情況を見せられて、気持を隠して勝つなんてちょっと違うと思った。
「棄権とはね、最悪だわ、あなたはフェスティバルを汚したのよ。真剣勝負の舞台の上であなたは逃げ出した。見損なったわそら」
背中でレイラさんは言う。その心境はわからない、表情もわからない。
観客としてはそらの気持は判る、レイラさんには、でもそんなそらも好きだと言って欲しかったけど、言わない。レイラさんもそらの受けた境遇は理解していると思う、その上で、演技をしろということかも知れない。残念なところや、そらを許してあげたい気持があるのかもとか、いろいろと想像させる背中だった。
いやほんとうにすごい物語の駆け引きだ。そらに勝てるという実力を見せつつ勝たせない、そして勝たせない理由にも納得のいく物を用意する。そしてそれを締めるレイラさんの立脚点。素晴しい。
実際、すごいと思う、夢に憧れて挑戦すると言う構図、そらはそれを手に入れた。手に入れた夢は、そんなに輝いた物じゃなかったとか、維持しづける苦しさとか、そう言った物もあるし、今現在の社会構造としては、夢なんて見つからないとか、夢自体がすでに魅力的じゃない、薄汚れている面が見えてしまって意欲的になれないとか、そういう現実を、サーカスは人の足の引っ張り合いで、面白い事なんて無かった、とか突きつけている。
こういう事っていろいろな面でも見えてまくると思う。憧れのアニメの仕事に就いたけど、とか声優の仕事に就いたけど、とか、漫画家になったけどとか、ラノベ作家になったけどとか、夢みたいな場所に立ったとしても、それを続ける苦難の他に、その場所自体が美しい物じゃなかった、才能のある人達が自分を刺激しあって、そこに到達するだけで、自分はもっと上に行けるとか、そんな世界じゃない、常に人の顔色を窺い、足を引っかけるチャンスを待っている世界だった、とかそんなことだったら残念だし、ある意味で、そういう現実を上手く物語に取り込んでいると思う。
今最も、現実に即した夢を叶える事を描いた作品かも知れない。