美鳥の日々

面白い、正直その手の展開の物語に興味があるからちょっと穿った見方をしてしまうところがあるかも知れない。
なんていうか、設定が無理矢理なんだけど、無理矢理をどう破綻なく落し込んで納得させて感動させたり笑わせたり楽しませられるかと、そう言う挑戦だったり、説得力に対する匙加減を見たいし、会得したいとか言う願望があるみたいで、この手の話には特に観察対象にしちゃうっぽい。


このへんはhttp://www.geocities.co.jp/WallStreet/1356/kuru/EVILTEXT.htmlとかが興味深い。

書くべきことは、「どこかで聞いてきたこと」でも「自分が思ったこと」でもなくて、「思ってもみなかったこと」なのです。「自分が考えた(と信じる)こと」でなく「考えもしなかったこと」なのです。それは書き馴れた人の「手くせ」なのではなく(それは2.の段階にすぎません)、もっと別のものなのです。考えをまとめて書くというのは、「手紙」や「小論文」であって(それはむしろ社交辞令に類するものです)、「文章」ではありません。どうして考えてもいないことが書けるのかと、信用しない人もいるでしょう。けれど「自分の考え・感じたこと」を書くというのは、「文章」でなくただ「思考の記録」にすぎないのです。「考えてもいないこと」が書けないなら、「文章」を書く意味なんてないのです。

とか。物語を書くときに、今までどこかで読んだ物語で経験による手くせでサラサラ書ける物語じゃなくて、今までに読んだことがない設定や展開で、思っても見なかった状況からどんなことをおこせるか、どんなことが掛けるかということが一番重要だと思っていて、美鳥の日々という物語は、挑戦してると思ってすごく高く評価している。


で、物語。不良の沢村は、悪魔の右手と言われて、クラスでは避けられているっぽかった。まあ暴力を喜んで振るうわけじゃないし、威張って喜ぶバカじゃないし、反応としては正しいのかも知れないな。なんか逆イジメっぽくて意外だった。


委員長役みたいな隣の席の貴子が、毛嫌いしつつ、惹かれていくのとかもこのへんはよくあるっぽいけど。


学校に別の不良が来て貴子が突っかかる。連れ去っちゃうと言い出すが回りは助けようとしない。無理矢理連れていこうとするのを足元で表現するのは上手いなあと思った。


絶妙のタイミングで沢村が蹴りで入ってくるところとかも上手い。貴子にただの不良と違うのかなと思わせる。


子分が連れ去られて助けに行く。それを知って貴子は見に行く。またケンカしたいだけなのかと思わせて、これ以上暴力の連鎖が続かないようにやられるままになる沢村。確かに殴ったら終わる話じゃなくてまたやり返しに来るから正しいけど、それで相手が納得するかは別で、その辺は物語の都合良さは少しだけ感じた。


その後は、美鳥の家に行くことに。自分の家に行くことが嫌な美鳥というのは、物語の文脈的には正しいけど、本人的にはどうなんだろうと思ったりもして難しいなと思う。
美鳥の性格や反応は狂言回し的に都合良く回している感じがするんだけど、その辺の匙加減が自分にはちょっと、と違和感がありつつ、納得行くように弄りたおすと、逆に綺麗になりすぎて、作り物めくし難しい。
右手美鳥が自分のことや状態をどう認識していて、どうしたいのか今ひとつわからなかったり伝わりにくかったりしているかなとか。
母親を悲しませたくないという意味では、小さくなっててもちゃんと声を掛けたり、物語のウソを公にした上受け入れられていくように作り込んでいく方がいいかなと思ったりもする。
ああなった原因がちゃんとあって、それを知っていて、だからそこ会いたくないとかいろいろあるんじゃないかと今の時点では思うけど。

言ってみて意識不明だったのは想像通り。手になってることを親に知らせたくないと言うのは、自分には理解半分、疑問半分だったかな。


その後の展開は、沢村を美鳥の家に近づけさせないための苦しい表現っぽいよねとか思った。無意識の娘の乳を揉む変質者っていうのは、無理があるんだけど、まあ楽しい展開って言うか。
大体なんで裸なんだよ(笑)


その辺の自分に対する情況の説得力が70%くらいだったので、最後の下りは素直には共感して泣けなかった。完全共感してたら滂沱したりテープ保存したりしたと思う。