「牙」

四話目あたりから落ち着いてきて安定して面白味を持ってみられるようになってきたと感じられた。


今までは、周りの環境から抑圧されて不満を感じている主人公、扉を壊しまくって、とかワケワカンナイ心境だったり、息苦しいこの場所を抜け出して風の吹く場所へ行ったけれど、そこでも回りの反応は自分を囲い込もうとしていたのだった、


みたいな所をやっと抜け出して、回りからのプレッシャーから解放されて、ゼットはやっと自分はなにをすべきかとかに思いを馳せられるようになってきた、と。


そうなって来たら来たで、主人公はなにも目的を持っていない。
この手の話だと、自分の元来た場所へ帰るという欲望が物語を動かすのが定石なんだけど、元々が戻る世界には自分が戻る魅力を感じていないし、帰って会いたい人もいない、と。
ゼットは母親思いなんだけど、母親はオカシイし、今となっては母を元に戻そう、という意欲もセットに湧いてこないというのも判るし。


後は普通には、その物語世界が主人公に世界を救うとか役割を求めてくるというのがよくある流れなんだけど、それすらもなく(今のところ、ゼットのキャスターが常識はずれの力を持っている特別な存在だ、という属性はあるけれど)
セットの思うがままという形で物語が方向性を失っている、という所が面白いというか、新しいと思う。


今は直情的にゼットが自分の身体から出てくる物に対して、自分の力なのか、それが何なのか知りたい、とか自分の無力を自覚して無力じゃない自分になりたいという、
目的は明確じゃなくても、強くなりたいということと、自分はこの世界にとってなんなのか、なにをするべきなのかという自分探しをテーマに話を引っ張っていくという形。


そのへんが判ってくれば、作り手がどう物語を運んでいくのだろうと、手腕を楽しみに見ていける物語になってきていると思う。


後やっぱり、その国、人々の生活を心配して制御しようとしている大人の顔がちゃんと書けているていう所はちゃんとしていて信頼して見られるかなと。