映画 ロスト・ハイウェイ

借りて見た。
すごい良い、と同時に、失望した、とかいう自分の印象が面白く、ちょっと書いてみたり。



自分はロスト以前にマルホランド・ドライブの方を見てたんだけど、マルホは、これがまた、ドえらく面白いんだけど(どう面白かったかはあんまり書かない。ここで特に書くことにも意味がないし)とにかく発想が面白くて、どうやったらこんな話が思いつくんだろう、みたいに面白かったわけ。


でその前に作られたロストを見たわけだけど、これがマルホの原点だったんだなあというか、ロストでの発想を整合化させて整理して物語にしたんじゃないのかなと言うわけなんだけど、それがなんていうか、アイデアの着想は思いつきで、未消化で、要するにレベルが低いからこそ、思いつく着想が判るという感じという。


具体的に言えば、ロストの内容は
男の元に、思い当たりのないビデオが届くんだけど、それがそのうちに自分が妻を殺してる映像になって、ビックリしてたらこの人殺しと刑事に殴られて死刑囚になる、死刑囚として独房にいたけど、彼は突然別人に変化してしまう、不可解な出来事だけど、釈放するしかなく……


みたいな話の流れで、死刑囚になったら逃れるために別人になったら、みたいな展開なら着想としてはそんなに高度な発想じゃなくてまあ想像できるだろうなと。
そういう話の途中で別人になっちゃうという原点を引きずってるマルホは、それ単体だとすごい発想力だと思うけど、こういう段階でアイデアが成長してきた物だと判ると、ああそういう事なのかというか。


(まあロストもそれ以降の展開からこんなに安直な発想とアイデアじゃない事になっていくんだけど)



となかなか面白い話。その一方で着想としてまだ整理されていなかったから、マルホを見た後から見ると、やたらに乱暴で未整理で無茶苦茶で完成度は低い。でもその低さが、不可思議という不気味さを醸し出していて面白いのかも。逆にマルホの方が難解だけどロジックとして解釈は付きそうだから怖さは半減してしまうし。

後はネタバレなので。ていうか、二周目でメモ書きしつつという。

二周目確認しながら。


冒頭のディックロラントは死んだ、という伝言は実は自分の物だった、というビックリ展開なんだけど、後で警察から逃げているしサイレンとか騒々しいから、アレも妄想と思ったけど、よく聞くと小さい音でサイレンは聞こえてた。


今見ると、冒頭からの主人公の表情は苦しい感じ、もうすでに妻を殺して苦しんだ表情にさえ受け取れる。(捕まってからが妄想の始まりではなくて、冒頭からもうすでに主人公の妄想と捕らえるとこの過程さえ自己欺瞞の表情に受け取れる)


妻との会話、読書するから行かないという主張、初見だと何気ないけれど、この段階で、妻が浮気しているから行かないという解釈も出来る、また主人公もそれを判っているから、あそこでの笑いが嘘から来る緊張による笑いとも受け取れる。


サックスを吹く主人公の熱の入れようは妻に対する疑惑からの苛立ちをぶつけているようにも見える。


ステージには来ないと言ってた妻が別の男(アンディ)と来ている、というイメージを主人公はサックスを吹きながら見ている(それが幻想かほんとのことかは曖昧)


家に帰ってくる、妻とエッチする、なんか途中でフラッシュ、フラッシュの後も行為は続くけど主人公は行けず「いいのよ」と妻、浮気を疑ってるんだろうなあ。


夢の話、昨日家に帰ってきた、キミはベットで寝ていた、でもキミに似た誰かだったんだ、と夢の中で目を覚ました妻が悲鳴を上げる、という夢。(この段階で主人公は昨日帰ってきて妻を本当に殺していて、事実を夢として受取っていたのかも、とするとこの時点での妻との対面も主人公の妄想と言える)


妻の顔がミステリーマンに見えてしまう。


アンディのパーティでミステリーマンに会う。以前にも会いましたね、と。妻の顔の中にいたけどさ。家に電話を掛けると目の前の人物が電話に出る(どういう意味を表しているんだろうこれがもう幻覚と言うこと?ミステリーマン自体が主人公の別意識という解釈を意味するため?)お前は誰だという質問にこれ見よがしに笑う。
アンディに誰か尋ねるとディックロラントの知り合いという。


妻にアンディとの中を尋ねるとバーで会った知り合いで昔仕事を世話になったという。以降の幻想の中では妻がポルノに出たという事になっている。


家へ帰ると誰か居る気がする。誰もいない


家へ入った後妻が主人公を呼ぶ、主人公が見た夢と同じセリフ。
その後カメラは闇に溶けてテレビ画面から戻ってくる。そのへんの時間経過が曖昧、主人公は殺しのビデオをセットする。(この闇の間に夢の通りに主人公は妻に覆い被さり殺人が行なわれたと解釈できる)


捕まって独房入り、頭が痛いという、ドアを見ていたら砂漠の小屋、爆発の逆回し、ミステリーマンが小屋へはいるというイメージ。
ハイウエイのイメージ道の先には入れ替わるピート、行かないでピートと言われる。


変身後の世界は、なにをかいわんやだよなあ。
妻を殺して死刑になった男の現実逃避の妄想でしかないし。
ただ現実逃避の妄想だからといってなんでも起こって、しかりというわけじゃなくて、そこには男の欲望とか、無意識下の男の恐れとかが反映しているのだとして読み解くことによってなにがあったのか、というのが判るしという事だろう。


変身したピートがモテモテなのも男の願望。
ピートと関わり合いになる強面のディックロラントは男が恐れる物であるし、その後語られる妻とそっくりな金髪美人はロラントと関係があったということは、現実で妻とロラントが密会していたのだろうと主人公は思っていたと言うことだろうし、アンディが手引きしたり。


ピートがアリスをお前が欲しいと求めるとアリスは貴方にはあげないといい、我を取り戻したようにピートは主人公に戻り、ロラントを殺害する。
妄想の中でだけでも妻を寝取った男を殺したかったと言うことなのかな。


そして自宅へ戻りディックロラントは死んだと自分に告げる。
とここで時間が戻っちゃってる、これはもう妄想でもありえないし、というか、これを現実と想定しても、妄想と想定しても、どっちにも成立しないし、もうそうなるとディックロラントは死んだと聞いたという初めから妄想だったというか、その時の言葉自体は聞いてもいないんだけど、そう聞こえたという幻聴が起こったとでも解釈するしか無いかなあと。(この段階で主人公は妻がディックロラントに寝取られていることを知っていて、あいつが死んでいればなあという欲望があったからああした幻聴が聞けたというしか。とすればサイレン自体も聞こえてきていたことに整合性はなくなるし)


あとは、いずれにしてもビデオの映像は撮りようがない描写が存在する(実は主人公の記憶にない別人格のミステリーマンが撮ったという想定も成立しない表現が含まれているから)からそれを妻と見たとか刑事に見せて確認されたとか、その段階で事実と思える主人公の前半部も男の現実逃避の妄想でしかなかった、と解釈されるべきなのかなあと。