vermilion::text F17 LightTrack 構成中

カインを残し私は上への道を目指した。
私にはどうしようも出来ない。私はここを上の道と選んだ。カインは開くことのない飾りの扉を上の道と信じている。それしかない。
扉を開き中へはいると階段だった。後ろで閉めたはずの扉はなぜか消えた。下へ続く階段と上へ続く階段の中間に放り出されたという事だった。あまり照明の当たらない薄暗い階段だった。しかたがない、わたしはこれを選んだのだから。
気を取り直して上へと進む。黙々と直線に続く階段を上った。階段の端は切り立った崖だった。
しばらく歩くと、どこからともなくいい匂いが漂ってきた。
と、だいぶ先の階段に光がさした。なんだろうと思いながら上っていく。子供や犬の声が聞こえる。
近づいていくとさらに様子がわかった。
「お父さん、しらない人がいる」「大丈夫ですか・・・?」「聞こえてますか?」
私は以前11階で飢えてあの男の所へたどり着いたときのことを思い出していた。
「すみません・・・いきなりなんですが・・・とりあえずなにか食べ物を。」
閉まりかかった扉から声が聞こえる。
私は自分の荷物の食料の膨らみを確かめながらその扉を通りすぎた。
http://d.hatena.ne.jp/hinocha/20030423#1051074560